母が他界しました。「子どもが18を過ぎたら母親業は卒業!」と思春期前の子に言い切り、自分がやりたいと思ったことには100%の努力を厭わない、恐らく一般的には少し変わった母でした。母を知る友人からも「おもしろいお母さんだよね」と言われ、そんな母を誇らしく思っていました。大学で私が一人暮らしを始めても「お米とか送料考えたらそっちでも買えるし要らないわよね」と物資の仕送り要求の隙はなく、就職先においても「働いて自立してくれればOK」と会社や仕事内容には無関心で極めて合理的でした。かと思えば、水炊きに出汁が必要なことを知らなかったり、桃の剥き方が独創的だったりと、とにかく我が道を行く母でした。「Green Thumbを持っているの」と得意げに話し、花を育てるのや裁縫や刺繍が好きで、ハウス名作劇場やビバヒルにハマる可愛い人でした。母親というよりも人生の楽しみ方という点で刺激を受けることが多かった気がします。晩年はあちこち痛みがあり、二人での旅行は一度きり。もっともっと…。コロナで失われた時間が悔しくて「たられば」の思いは尽きません。でも、いつも精一杯駆け抜けた母自身は、今きっと後悔は無いんだろうとも思います。享年74歳。いつの間にか背丈は私より小さくなっていたけれど、母の存在は永遠に偉大です。
母が保管していた本に『星の王子様』がありました。「ぼく、もう死んだようになるんだけどね、それ、ほんとじゃないんだ…」「それ、そこらにほうりだされた古いぬけがらとおんなじなんだ。かなしかないよ…」「だからね、かまわず、ぼくをひとりでいかせてね」- 目では見えなくなってしまったけれど、この先は心で繋がろうね。